2011年5月24日火曜日

骨肉腫の転移抑制物質を新発見

骨肉腫の転移、抑える物質を発見 鳥取大

細胞の機能を抑える性質を持つ物質が、骨のがんの骨肉腫が肺へ転移するのを抑える作用を持つことを、鳥取大学大学院医学系研究科の尾崎充彦助教(腫瘍〈しゅよう〉生物学)が発見した。国立がん研究センター(東京都中央区)の落谷孝広博士との共同研究で突き止め、アメリカの科学誌で発表した。骨肉腫は10代に多い病気で、新たな治療法の開発につながることが期待されている。

この物質は、遺伝子の働きにかかわるリボ核酸(RNA)の断片の一つとされる「マイクロRNA143」。細胞増殖や生理活性物質の分泌など、細胞の機能を制御する作用を持つという。

尾崎助教らの研究グループは、約1千あるといわれるヒトのマイクロRNAのうち、肺に転移した骨肉腫細胞の中で少なかったマイクロRNA143に着目。ヒトの骨肉腫の細胞を投与したマウスを10匹ずつ二つのグループに分け、その一つのグループに3日おきにマイクロRNA143を50マイクログラム投与した。

20匹全部のひざ部分に骨肉腫が確認されたが、4週間後には、この物質を投与されなかったグループは10匹すべての肺にがんが転移していたのに対し、投与したグループで転移が確認されたのは4匹だけだった。

この実験結果などから、マイクロRNA143には、骨肉腫のがん細胞が周囲の細胞組織を壊して広がるのを抑える働きがあると結論づけた。

骨肉腫は発症患者の約6割を10代の若者が占める病気。手術や抗がん剤の投与で治療することができるが、術後5年以内に3~4割の確率で肺に転移する。転移したがんは、病状が進行しているので治療が困難なことが多く、転移をどう抑えるかが大きな課題になっている。

尾崎助教は研究の成果について「骨肉腫の転移を予防する新しい治療法や薬の開発につながり、十分に解明されていない転移のメカニズムも明らかになる可能性もある」としている。

2011年5月23日 朝日新聞