2011年6月6日月曜日

転移性皮膚がんに新薬

皮膚がん治療薬 数十年の成果

シェリル・ストラトスさん(46)は、最も悪性の皮膚がんであるメラノーマ(悪性黒色腫)が転移し、医師から余命6~8カ月と告げられている。   広告会社を経営するストラトスさんは、メラノーマ治療薬「PLX4032」(一般名:ベムラフェニブ(vemurafenib)の臨床試験を2010年2月に開始。今年4月には、肝臓や肺の腫瘍が検出できない程度に縮小した。ストラトスさんは「生き返ったようだ」と語る。
スイスの製薬会社ロシュ・ホールディングと日本の第一三共が開発した同治療薬は、がん生物学における革命的な治療の一つだ。転移性メラノーマは長い間、致命的疾患とされ、 米国では年間8700人が死亡している。現在、ロシュ、第一三共、米製薬大手ブリストルマイヤーズ・スクイブ、英製薬大手グラクソスミスクラインの医薬品の治験が進められ、ストラトスさんのような患者の予後が改善しつつある。
米ダナ・ファーバーがん研究所のメラノーマ部門、ステファン・ホ ディ氏は「科学は進歩している」と述べ、「メラノーマの治療は新たな局面を迎えている。新薬の登場で治療の併用や、生存期間の延長が見込まれる」と述べた。これらの治療で治癒することはないが、腫瘍の遺伝子を標的とし、がん細胞の侵入を阻止する抵抗力を持つことで、治療にどれほどの進歩がみられるか示されている。
グラクソスミスクラインの「GSK2118436」と組み合わせて利用する研究も進められている。同医薬品はメラノーマの転移を促進する変異タンパク質を阻害する。
ストラトスさんの担当医であるカリフォルニア大学の腫瘍専門医、アントニー・リバス氏は、新たな治療法によって、今後5~10年で進行したメラノーマの患者の生存期間が10カ月から20カ月へと2倍に延びるかもしれないと予測する。
今回の研究は、何十年にも及ぶ失敗の歴史が生んだものだ。今年に至るまで、進行したメラノーマの治療薬として承認された医薬品はわずか2種類であり、いずれも延命につながるとは証明されていなかった。米製薬大手ファイザーや独製薬大手バイエル、グラクソスミスクラインなどの企業のメラノーマ治療薬は、最終開発段階でつまずいていた。

2011年6月6日 ブルームバーグ