2011年6月23日木曜日

次世代型重粒子線がん治療

世界最高速3次元スキャニング照射法を用いた治療を開始-日本発の次世代型重粒子線がん治療,新たな展開へ-

独立行政法人 放射線医学総合研究所

* 新治療研究棟に設置された高速3次元スキャニング照射装置による重粒子線がん治療を2011年5月17日より開始し、6月10日に1人目の患者の治療を終了した。

独立行政法人 放射線医学総合研究所(以下「放医研」)重粒子医科学センターでは、新治療研究棟において、高速3次元スキャニング照射法による新しい治療システムを完成 させました。1例目の患者さんへの重粒子線がん治療を、2011年5月17日より開始し、6月10日に終了いたしました。なお、2例目以降の患者さんの治 療も既に開始しており、半年間程度10数名の患者さんに対して臨床試験を実施した後に、先進医療に移行する予定です。

今回の臨床試験に用いた治療システムは、複雑な形の病巣にも高速(最高で従来の100倍の速度)に照射可能で、さらなる線量の集中性および副作用の低減を実現できることから、日帰り治療の実現に向けた治療期間のさらなる短期化につながるものです。これらの成果は、日本発の重粒子線がん治療技術が世界に展開するうえで、重要なステップになります。

高速3次元スキャニング照射装置を中心とする新しい治療システムを備えた新治療研究棟の治療室の整備が完了したことを受けて、1例目の患者さんへの重粒子線治療を、2011年5月17日より開始し、6月10日に終了いたしました。1例目の患者さんは骨盤領域のがんの 方で、4週間にわたり16回の3次元スキャニング照射法による重粒子線の治療を受けられました。2例目以降では骨盤領域の他、頭頸部領域の患者さんの治療 も開始し、全て順調に治療が進んでいます。今後半年程度を目処に、治療人数が10数名に達するまで臨床試験を実施し、先進医療に移行する予定です。

照射領域が計画通りであることを確認するために、重粒子線照射によって体内に生じ、短期間で消失する放射性同位元素の分布をPETで撮像しました。その結果、1例目の患者さんで計画した領域に重粒子線が照射できていることが確認できました。

3次元スキャニング照射装置による重粒子線治療は国内初であり、国際的にもドイツの2施設(GSIハイデルベルク大学)に次ぐものです。また、重粒子線治療で拡大ビーム照射法と、スキャニング照射法の選択ができる施設は、世界で初めてです。

2011年6月22日 プレスリリース