2011年8月4日木曜日

薬剤耐性を回避できる肺がん治療新薬

ヤクルトと米プロアクタ社、共同研究開発対象に低酸素活性型プロドラッグ「PR610」を追加

抗がん剤の共同研究開発と商業化に関する契約の変更

~非臨床・初期臨床試験の共同実施の対象に「PR610」を追加~

プロアクタ社(最高経営責任者:John C, Gutheil)と株式会社ヤクルト本社(社長:根岸 孝成)は、本年2月に締結した、がん治療薬のため の低酸素活性型プロドラッグ(低酸素状態で活性型に変換される化合物)「PR509」の共同研究開発と商業化に関する契約(原契約)に、プロアクタ社が保 有し、「PR509」と同様の効果が期待できる低酸素活性型プロドラッグ「PR610」を含むよう内容を変更しました。原契約では、(株)ヤクルト本社 は、日本における「PR509」の研究、開発および商業化する権利を付与されています。

【PR509およびPR610について】
PR509およびPR610は、ニュージーランドにあるオークランド大学のオークランドキャンサーソサエティリサーチセンターで発見された、プロアクタ社が所有する低酸素活性型の不可逆的なマルチキナーゼ阻害剤(複数のリン酸化酵素の阻害剤)です。

現在、様々ながんの治療に際して、可逆的なマルチキナーゼ阻害剤が使用されていますが、薬剤耐性がしばしば発現します。また、副作用によって高用量の使用が制限される場合があります。

PR509およびPR610は、大部分の固形がんで特異的に見られる、極めて低酸素な状態でのみ活性型に変換される低酸素活性型であることから、その活性型の濃度が、がん細胞で高濃度となります。このため、有効性が改善され副作用が軽減されることが示唆されています。また、これらの薬剤の作用は不可逆的で あることから、可逆的な阻害剤に見られる薬剤耐性を回避することができると期待されます。

なお、PR509およびPR610は、可逆的 なチロシンキナーゼ阻害剤であるエルロチニブやゲフィチニブ耐性の非小細胞肺がんに対する開発を当面の目標としております。エルロチニブやゲフィチニブ耐性の非小細胞肺がんにおける効果的な抗がん剤治療は未だ確立されていません。プロアクタ社は、将来的には、これらの薬剤について非小細胞肺がんに加えて、 胃がん乳がん膵臓がんのような他のがんについても検討を行う予定です。

2011年8月3日 プレスリリース