2011年8月15日月曜日

医療現場の大量被ばくに警鐘

『放射線被ばく CT検査でがんになる』近藤誠著 これって原発事故くらい怖いかも 

 CT検査の放射線被ばくの量がこんなにすごかったとは! 原発事故で国が避難の目安にした年間被ばく線量20ミリシーベルトに対し、胸部CT検査1回の線量は10ミリシーベルト。エックス線撮影の200~300倍。これってヤバくないですか?

 著者は「抗がん剤は効かない」「がん検診は百害あって一利なし」と常識を覆す言説で物議を醸してきた放射線科の医師だ。昨秋、雑誌でCT検査の危険性を告発して大きな反響を呼んだ。本書でも医療現場の大量被ばくに警鐘を鳴らし、原発事故による被ばくと発がんとの関連について解説した。

 日本のCT装置の台数は断然世界トップで、そのぶん検査による被ばく線量も、検査が原因の発がん死亡率も世界第1位という。これほど日本が医療被ばくに無警戒なのはなぜ? 著者によれば、国も医療機関も患者・家族に正確な情報を伝えず、健康被害を最小に見せかけるように画策してきた。ん? この構図、最近見かけたような…。

 さらに放射線被ばくに関する医師の意識は低く、「とりあえず」「念のために」と安易にCTをオーダーする。問診や聴診より手っ取り早く、しかも使うほど儲かる仕組みになっている。いや、患者にしたって「最新機器」による検査をありがたがる傾向がある。

 放射線検査は「健康」を理由に生涯にわたって付き合いを迫られる。自己防衛のためには基本的な知識が必須だ。がん検診が原因でがんになったらブラックに過ぎる。

2011年8月15日 共同通信