2011年8月16日火曜日

副作用の少ない新抗がん剤治療法


がん細胞狙い薬剤投与 金大グループ

がん細胞だけを狙って薬剤を投与する独自の手法を、金大の研究グループが15日までに開発した。1マイクロメートル(1千分の1ミリ)以下の容器に抗がん剤を仕込んでがん細胞と結合させ、超音波を当てて薬剤を放出させる仕組み。正常な細胞には影響を与えないため、実用化すれば、副作用の少ない抗がん剤治療につながる可能性がある。

体内に入った薬剤を効率的に患部に到達させる「ドラッグデリバリーシステム」の一つで、環日本海域環境研究センター・理工学域自然システム学類バイオ工学コースの清水宣明教授と仁宮一章助教による研究。

抗がん剤は、リン脂質など高分子の人工膜で作った微小な容器内に閉じ込められる。同グループは、この容器が超音波を当てると表面が変形して割れる性質を利用した。従来、抗がん剤を収める容器には熱に反応して壊れるものなどがあった。ただし、熱が届きにくい場所にがん細胞がある場合、相当な加熱が必要で人体に使うには課題が多かった。超音波なら、容器を体内の奥深くまで送り込んでも十分に届き、体への負担も小さいという。

実験では、抗がん剤を封入した容器の表面に、肝がん細胞だけに結合するタンパク質を組み込んだ。これを肝がん細胞を含む培地に入れて超音波を当てると、肝がん細胞に抗がん剤が効いていた。大腸がん細胞を用いた実験では反応せず、肝がん細胞だけを狙い打ちすることが確認された。

今後、マウスなどの動物実験で、生体内で変わらず効果があるかを検証する。容器表面に組み込む生体分子を変えれば、他のがんに応用できると考えられ、肝がん以外のがんに作用する分子を探す。

清水教授は「臨床で実用化されるまでには安全性など多くの検証が必要だが、副作用の少ない治療の実現に向け、研究を積み重ねたい」と話した。

2011年8月16日 富山新聞