2011年10月4日火曜日

がん抑制遺伝子を発見

福島県立医大、がん抑制新遺伝子発見 放射線障害と関連

 福島県立医大は3日、がんを抑える新しい遺伝子「NIRF(ナーフ)」を発見したと発表した。細胞内のがん抑制機能の中心的なタンパク質を合成する遺伝子で、他のがん遺伝子やがん抑制遺伝子と相互に作用して働きに影響を与える。他遺伝子と幅広く相互作用するタンパク質を合成する遺伝子が確認されたのは世界初。

 同大看護学部生命科学部門の森努准教授(47)によると、NIRFはサイクリンD1などがんの発症を促すがん遺伝子に作用し、がん化を抑える。pRBなどのがん抑制遺伝子にも働き掛け、機能を促進する可能性もある。  がんは細胞分裂を止めることによってがん細胞の増殖を抑え、発症を防ぐことができる。NIRFは細胞分裂を停止する機能の中心因子に位置付けられ、個別の遺伝子の働きを調整する。
 研究の結果、実際に特定の肺がんでNIRF遺伝子の染色体がわずかに失われていたことが判明し、NIRFの異常が肺がんの原因になっていることが裏付けられた。

 森准教授は「これまで個別のがん遺伝子やがん抑制遺伝子は発見されていたが、これらの遺伝子の階層構造の頂点に位置し、幅広く相互作用する物質が見つかったのは初めて。放射線障害と関連する遺伝子で、福島第1原発事故の健康被害を最小限に食い止めるためにはNIRFの機能解析が欠かせない」と話している。
 研究成果は1日付の米国の科学誌「セルサイクル」に掲載された。

2011年10月04日 河北新報