2011年12月5日月曜日

膵臓がんの新薬開発が最終段階

膵がん新薬開発へ指針 ペプチドワクチン療法、治験最終段階

 第4の治療方法として期待が高まる「がんペプチドワクチン療法」 で、世界に先駆け日本で実施している臨床試験(治験)が最終段階を迎えている。これに合わせる形で薬剤としての開発指針(ガイダンス)がまとまり、概要が 30日、明らかになった。12月1日から和歌山市で開かれる日本バイオセラピィ学会(会長・山上裕機和歌山県立医科大学教授)で発表される。

 この治験は膵(すい)がんに 対するもの。進行が早く、90%以上が5年以内に亡くなり、人口動態調査によると、平成22年の死者は約2万8000人。同治験は2年前に始まり、和歌山 県立医科大をはじめ全国27施設で153人を対象に実施されている。治験(第2・3相)の結果が来年3月に明らかになる予定で、承認されれば、がんペプチドワクチン療法として世界初となる可能性が高い。

 今回発表されるガイダンスは、こうした治験の進(しん)捗(ちょく)状況を踏まえ、がんペプチドワクチン療法のみを対象とした点が特徴。「同ワクチンの新薬が一刻も早く患者に届くようにまずガイダンスを整備することになった」(策定委員)という。

 ガイダンスの「臨床試験」の章で、従来の抗がん剤などの治療の後に同ワクチン療法を開始しても「患者さんの免疫が弱体化した後では効果が得にくい」とされ「早期に投与すれば、免疫反応が十分に強化され、がんとたたかうまでの十分な時間を確保できる」との特質が明記された。

 ガイダンスは数カ月後に学会の方針として正式に策定され、その後、厚生労働省が策定する指針に大きな影響を与えるとみられる。

 武藤徹一郎・がん研有明病院メディカルディレクターの話 「これまでの他の治療法の指針は、短期的にがんが小さくなったかどうかを基準にしていた。ワクチン療法は新たな視点の基準でないときちんと評価できない面があり、今回の指針でその点が明確になると期待している」

 がんペプチドワクチン療法 外科手術、抗がん剤、放射線治療などと違い、ワクチン注射により免疫力を高めることで間接的にがん細胞を攻撃する方法で「がんの第4の治療法」と呼ばれる。がん細胞のタンパク質と同様の断片(ペプチド)を人工的に作り注射すると、それに反応しようと免疫細胞が活性化してがん細胞を攻撃させる仕組み。特別な免疫力を利用するため副作用がほとんどないのが大きな特徴。

2011年11月30日 日本経済新聞