2012年1月24日火曜日

白血病治療薬を止める臨床試験


 “血液のがん”で最先端の治療を提供

がん・感染症センター都立駒込病院  「血液のがん」は、血液中の白血球ががん化して異常に増える急性白血病が代表格だが、最初はほとんど自覚症状がない慢性白血病、高齢者に多い骨髄異形症候群などさまざまなものがある。
 そんな血液のがんに対して、がんを狙い撃ちにする分子標的薬の登場や、新たな血液を作り出すための骨髄液や末梢血、臍帯(さいたい)血を用いた移植法など医学は確実に進歩し続けている。その最先端の治療を行っているのが、がん・感染症センター都立駒込病院血液内科だ。
 移植では、強力な放射線化学療法や移植特有の合併症に対応するため、循環器、消化器、呼吸器、腎臓内科、歯科などの臨床各科ばかりでなく、臨床心理士、歯科衛生士や薬剤師などの連携によるチーム医療を実現しているのも強み。
 「移植医療では総合力が不可欠です。移植体制を万全なものに整え、新薬の登場によってこれまで移植の難しかった症例でも行えるようになり、治療の選択肢は増えているといえます」
 こう話す同科の坂巻壽副院長(63)が、現在、最も力を入れているのは「慢性骨髄性白血病」と「骨髄異形成症候群」の新薬の研究である。慢性骨髄性白血 病では、かつて急性白血病に転化してしまうと、抗がん剤治療は困難を極めた。ところが、2001年に登場した分子標的薬「イマチニブ」は慢性骨髄性白血病の治療法を根本から変え、2009年には新たに2つの薬も登場。それらの薬によって、慢性骨髄性白血病そのものが飲み薬で治る可能性も出てきたという。
 「分子標的薬はこれまで、飲み続けなければいけないとされてきましたが、2010年秋にフランスで『イマチニブ』がよく効く患者さんで薬の服用をやめる臨床試験を行ったところ、約4割の患者さんが治ったと報告されました。新たな分子標的薬の効果も高いので、飲み薬だけで治る症例が増えることを期待しています」(坂巻副院長)
 一方、高齢の男性が発症しやすい骨髄異形症候群でも、2010年1月に「アザシチジン」という分子標的薬が承認された。この場合は、薬だけで病気を治すというのではなく、移植治療への懸け橋となる。これまで状態が悪く移植が適用されなかった人も、新薬の登場で移植が可能になるケースが増えるそうだ。
 「『アザシチジン』に関しては、薬の効果を科学的に検証中です。骨髄異形症候群の患者さんには移植しか治る手立てがないだけに、より多くの人が移植の適 用になれるようにしたい」と坂巻副院長。夢は「将来、飲み薬だけで血液のがんを治すこと」。現在、さまざまな新薬が登場しているとはいえ、最大の武器が 「移植」であることに変わりはない。その現状を打破するために、今も力を注ぎ続けている。(安達純子)
<データ>2011年実績
☆急性白血病患者数154人
☆慢性白血病患者数46人
☆骨髄異形成症候群患者数59人
☆多発性骨髄種患者数41人
☆移植82件
☆病院病床数906床
〔住所〕〒113-8677東京都文京区本駒込3の18の22
 (電)03・3823・2101

2012年1月8日 zakzak