2012年2月8日水曜日

熱が がんを死滅させる新治療機器

がん細胞は高温になると死んでしまうものの、正常細胞も高温過ぎると死んでしまう。
がんに対する温熱療法は細胞が死なない程度に体温を上げることで、免疫細胞の活性を向上させる癌治療法と言える。その意味においては、がん患部を温める熱源は何でも良く、磁力を用いなくとも、遠赤外線でもお湯でも体温を上昇させられればがんの治療効果は上がる。古来から人類が実践してきた癌治療法の代表である「湯治」の本質は、温泉で体温を上げることで免疫力が強化され、病変部に対して免疫細胞が作用することが有効なのだ。
問題は、全身を暖め過ぎるた場合の疲労だ。ゆえに機器を使った癌患部周辺だけの効率的な加熱法は有用なのだ。逆の視点からすると、疲労しない程度の入浴による過熱でもがん治療には良い影響を与えることができる。湯治となると大げさになり、覚悟と準備が必要だが入浴の際に疲れない程度に「温まる」ことは今日から始められるがん治療・がん予防なのだ。

子宮頸部の前がん病変、熱で細胞死滅 アドメテックが治療装置愛媛大で臨床試験
 愛媛大学発ベンチャーで医療機器開発のアドメテック(松山市、中住慎一社長)は、子宮頸(けい)がんになる一歩手前の異常細胞を温度を上げて死滅させる治療器を開発した。治療は日帰りが可能で、入院が必要となる切除に比べ患者の身体的負担を軽くできる。医療機器の治療効果を検証する臨床試験(治験)を始めており、2015~16年の発売を目指す。
治療器「ATMC400」は患部を温め異常細胞を死滅させる
 治療器「AMTC400」が死滅させるのは、子宮入り口の表皮にできるがんの前段階の異常「前がん病変」を持つ細胞。この細胞を放置すると、表皮の内側に潜って拡大、子宮頸がんを発症する可能性がある。異常を早く見付け、がん化を防ぐのがこの段階での治療の基本とされる。
 日本では前がん病変の治療法として、前がん病変を含む子宮の一部切除やレーザー照射による細胞死滅などがある。しかし、子宮を傷付ける切除は入院が必要で体への負担が重く、レーザー照射は異常細胞が残る可能性があるという。
 同社が開発した治療器は、患部に刺す小さな針と磁場発生装置の2つで構成する。治療器を使う医師は患部に針を刺し、刺した部分に装置の磁場発生部「アプリケーター」を近づける。
 針を磁場によって温め、患部の温度を異常細胞が死滅するとされるセ氏43度を上回る同50~60度にする。
 原理はIHクッキングヒーターと同じ。アプリケーターがヒーター、針が鍋に相当する。レーザー照射も加温によって細胞を死滅させるのは同じだが、磁場による加温は異常細胞の取り逃しが少ないことが期待できるという。
 治験は前後半に分かれて実施、愛媛大学医学部付属病院で前半をこのほど開始した。12年中に同病院で6人の被験者に対して実施する。後半は全国の複数の病院が手掛ける。治療器は厚生労働省の承認を得たうえで、販売する。価格は現時点で450万~500万円を計画している。
 今後は腎臓がんなど、ほかのがんの前がん病変にも対応できるよう研究開発を進める。
 同社は愛媛大医学部と工学部の研究者らが03年に設立。医学(Medicine)と工学(Technology)が持つ技術の融合を掲げる。11年3月期の売上高は3200万円。現在は動物向けがん治療器が主力。

2012年2月8日 日本経済新聞