2012年7月17日火曜日

活性酸素を過剰蓄積させる がん増殖抑制法

がん患者の体内に活性酸素を過剰に蓄積させて、がん細胞の増殖を抑制する新しいがん治療法が開発された。

新しいがん治療法として注目されているのは、活性酸素の毒性を逆手に取り、目的の部位だけに活性酸素を蓄積させることでがん細胞の増殖を防ぐ治療法。

通常では、活性酸素の蓄積は細胞の老化などを引き起こすため、体内には活性酸素を取り除く仕組みがある。一方で、がんの増殖にはがん細胞へ栄養を供給する新生血管が関与していることが知られている。この新生血管では活性酸素を消去する役割を果たす「毛細血管拡張性肉芽腫変異(Atm)遺伝子」が活発に働いていることを発見したのだ。そして、Atm遺伝子の活性化を阻害すれば、新生血管に活性酸素を蓄積させ、がん細胞への栄養を遮断するがん増殖抑制法とできる。

新治療法では、がん細胞に酸素や栄養を供給する新たな血管網(新生血管)を維持できないよう遺伝子操作した。既にマウス実験では 新治療法によるがん増殖の抑制に成功している。

新治療法を開発したのは、慶応大医学部で、米科学誌ネイチャー・メディシンへ発表した。

この研究チームは遺伝子操作と同じ効果がある化合物の開発に取り組んでおり、成功すればがん組織だけ退治する副作用の少ない新薬ができると期待されている。