2012年10月31日水曜日

肺がんの転移を抑制する効果を新発見

心不全の治療に用いられているホルモン製剤に、 がん細胞の転移を抑制する働きが発見された。

がんは心臓へ転移し難いことから、心臓に特有なANPというホルモンに着目した研究が実施された。そして、 2009年から552人の非小細胞肺がんの患者のデータを調べたのだ。

調査結果では、心不全治療などでホルモン剤を使用しつつ がん手術した肺がん患者の2年後の再発率は4.5%であるのに対して、ホルモン剤を使わなかった人は19.2%と再発率が有意に高かったのだ。しかも、がんの進行度には関係なく再発率に大きな差がでた。

その後、人間のがん細胞を移植したマウス実験においても、ホルモン剤によるがん抑制効果は検証された。 がん細胞を移植されたマウスの血管転移のがん細胞数は、肺腺がんで約5分の1、肺の大細胞がん・大腸がん乳がんでは約3分の1と減少したのだ。

そして、ホルモン剤によって血管の内壁を守られ、 がん細胞が漏れ難くなっている仕組みが解明された。

ホルモン剤が肺がんの再発を減らす効果が実証されたことから、他のがん治療に対しても転移予防薬となる可能性が高まり、さらなる研究に期待が膨らんでいる。

ホルモン剤によるがん転移抑制効果は、国立循環器病研究センターと大阪大の共同研究チームが発見した。